【正文】 不管是什么聲響都無法進(jìn)入我們的耳里。那聲音聽來有些模糊，彷佛你正立在另一個世界的入口一般。風(fēng)吹過草原，輕拂著她的發(fā)，然后往雜樹林那頭遁去。綿延數(shù)日的霏霏細(xì)雨沖走了山間光禿禿的地表上堆積的塵土，漾出一股深邃的湛藍(lán)，而十月的風(fēng)則撩得芒草左右搖曳，窄窄長長的云又凍僵了似的緊偎著蔚藍(lán)的天空。再見?。? “ AufWiedersehen！”我也跟著說道?！?I hope you\39。s all right only felt lonely， you know.）”我笑著答道。我只是覺得有些感傷而已。剛剛那位空中小姐又走了過來，在我身旁坐了下來，開口問我要不要緊。我嗅著草香、聆聽鳥鳴，用肌膚感受著風(fēng)。思索那些失落了的歲月，死去或離開了的人們，以及煙消云散了的思念。于是她帶著微笑離開，這時，擴(kuò)音器又放出比利喬 的曲子。不久，一位德籍的空中小姐走了過來，用英文問我是不是不舒服，我答說不打緊，只是有點(diǎn)頭暈而已。不！遠(yuǎn)比過去更激烈地撩動著我、搖撼著我。正是披頭四的“挪威的森林”，倒不知是由哪個樂團(tuán)演奏的。唉！又來到德國了。十一月冷冽的雨湮得大地一片霧蒙蒙的?，F(xiàn)在，我正坐在波音七四七的機(jī)艙里。しかし結(jié)局のところそれはもう起ってしまったことなのだし、どう思ったところで仕方ない種類のことなのだ。こういう言い方は良くないとは思うけれど、彼女の気持はわかるような気がする。そして僕と直子は別れ、一年後に中央線の電車でばったりと出會うまで一度も顔を合わせなかった。それに加えて彼女のしゃべり方にはどことなく角があった。ちょっとした用 事があって喫茶店で待ちあわせたのだが、用件が済んでしまうとあとはもう何も話すことはなかった。相性がわるいとかそういうのではなく、ただ単に話すことがないのだ。キズキが戻ってくると、また話が始まった。だから仕方なく我々は殆んど何もしゃべらずに水を飲んだりテーブルの上のものをいじりまわしたりしていた。二人ともいったい何について話せばいいのかわからなかったのだ。そのようにして僕と直子は出會ったのだ。 「今度の日曜日、ダブルデートしないか？俺の彼女が女子校なんだけど、可愛い女の子つれてくるからさ」と知りあってすぐにキズキが言った。それでも我々はすぐに気があって仲良くなった。そしてどうして彼が僕を選んで友だちにしたのか、その理由もわからなかった。彼は學(xué)校では僕以外の誰とも仲 良くはならなかった。だから彼と話をしていると、僕は自分がとても面白い人間でとても面白い人生を送っているような気になったものだった。彼には場の空気をその瞬間瞬間で見きわめてそれにうまく対忚していける能力があった。どちらかが長く黙っているとそちらにしゃべりかけて相手の話を上手くひきだした 。キズキにはたしかに冷笑的な傾向があって他人からは傲慢だと思われることも多かったが、本質(zhì)的には親切で公平な男だった。三人でいると、それはまるで僕がゲストであり、キズキが有能なホストであり、直子がアシスタントである TV のトーク番組みたいだった?？激à婆餐纳? 2020425 26 みれば変な話だが、結(jié)果的にはそれがいちばん気楽だったし、うまくいった。 そんなわけでキズキは僕をダブル？デートに誘うことをあきらめ、我々三人だけでどこかに出かけたり話をしたりするようになった。直子のつれてくる女の子たちがその可愛いらしい頭の中でいったい何を考えているのか、僕にはさっぱり理解できなかった。でも正直なところ直子のつれてくる女の子たちは可愛くはあったけれど、僕には少々上品すぎた。僕とダブル？デートしたことも何回かある。 多くの幼ななじみのカップ ルがそうであるように、彼らの閥係は非常にオーブンだったし、二人きりでいたいというような願望はそれほどは強(qiáng)くはないようだった。僕にはキズキという仲の良い友人がいて（仲が良いというよりは僕の文字どおり唯一の友人だった）、直子は彼の戀人だった。彼女もやはり二年生で、ミッション系の品の良い女子校に通つていた。待っているよ」と僕は言った。正直言って、あの頃はよく顔をあわせていたわりにあまり話をしたという記憶がないから」 「そうね」と彼女もそれを認(rèn)めた。 「少し変ったような気がするね」と僕は言った。彼女は國分寺に小さなアパートを借りて暮していたのだ。 「會うのは全然かまわない よ」と僕は言った?！袱撙螭首苑证虮憩F(xiàn)しょうとして、でも正確に表現(xiàn)できなくてそれでイライラするんだ」 僕がそう言うと、直子は少しがっかりしたみたいだった。ちゃんとした言葉っていうのはいつももう一人の私が抱えていて、こっちの私は絶対にそれに追いつけないの」 直子は顔を上げて僕の目を見つめた。まるで自分の體がふたつに分かれていてね、追いかけっこをしてるみたいなそんな感じなの。見當(dāng)ちがいだったり、あるいは全く逆だったりね。「ここのところずっとそういうのがつづいてるのよ。「君の言おうとしてることはなんとなくわかるから。彼女はため息をついて目を閉じ、髪どめをいじった。そこに何か適當(dāng)な表現(xiàn)を見つけることができるんじゃないかと期待して見ているようにも見えた。「筋合なんて言うつもりはなかったの。彼女はトレーナー？シャツの両方の袖を肘の上までひっぱりあげ、それからまたもとに戻した。たぷん僕は少しびっくりしすぎたのだろう。 「ねえ、もしよかったら――もしあなたにとって迷惑じゃなかったらということなんだけど――私たちまた會えるかしら？もちろんこんなこと言える筋合じゃないことはよくわかっているんだけど」 「筋合？」と僕はびっくりして言った。だって二人で話をしたことなんて一度もなかったものな」と僕は言ったが、何を話したのか思いだそうとしてもさっぱり思いだせなかった。でも人は見かけによらないのよ」彼女はそう言ってから付けたすように少しだけ笑った。 「そうなの。それに父親が山登りが好きだったせいで、小さい頃から日曜日になると山登りしてたの。 挪威的森林 2020425 23 「ずいぶん體が丈夫なんだね」と僕はそばを食べ終ったあとで言った。 TV のニュースが今日の日曜日は行楽地はどこもいっぱいでしたと告げていた。注文してから食べ終るまで我々は一言もロをきかなかった。僕はあとをついてきただけ」 我々は駅の近くのそば屋に入って軽い食事をした。 「駒込」と僕は言った。穏かな春の夕碁だった。ちょっとした道のりだ。彼女は飯?zhí)飿颏怯窑苏郅臁ⅳイ肖郡顺訾?、それから神保町の交差點(diǎn)を越えてお茶の水の坂を上り、そのまま本郷に抜けた。まあいいや、散歩には良い日和だものな、と僕は思ってあきらめた。しかし、僕に聞こえても聞こえなくてもそんなことは彼女にはどちらでもいいみたいだった。うまく答えられることもあれば、どう答えればいいのか見當(dāng) もつかないようなこともあった。彼女は茶色の大きな髪どめをつけていて、橫を向くと小さな白い耳が見えた。もちろんその距離を詰めようと思えば詰めることもできたのだが、なんとなく気おくれがしてそれができなかった。僕は仕方なくそのあとを追うように歩いた。話題なんてそもそもの最初からないのだ。もっとも二人きりになってしまうと我々には話しあうべき話題なんて挪威的森林 2020425 22 とくに何もなかった。降りましょうよと直子が言って、我々は電車を降りた。彼女は一人で映畫でも見ようかと思って出てきたところで、僕は神田の本屋に行くところだった。 我々は何かの目的があってここ に來たわけではなかった。そして直子は僕がそれまで考えていたよりずっと綺麗だった。彼女のやせ方はとても自然でもの靜かに見えた。一年のあいだに直子は見違える ほどやせていた。直子は再び?xùn)|に向って歩きはじめ、僕はその少しうしろを歩いた。彼女はため息をついて目を伏せた。共同生活をするのってどんなだろうって。 「ううん、そうじゃないのよ」と直子は言った。二人きりで歩くのも初めてだし、こんなに長く話をするのも初めてだった。彼女がそんなすきとおった目をしていることに僕はそれまで気がつかなかった。そして珍しいものでものぞきこむみたいに僕の目をじっと見た。ここで暮らすしかないんだと思えば、それなりに暮せる。規(guī)則はうるさいし、下らない奴が威張ってるし、同居人は朝の六時半にラジオ體操を始めるしね。 「どうかな、そういうのって考え方次第だからね。それから身をかがめ七注意深く靴の紐をしめなおした。「でもそれほど悪くはないね。 「よくわからないよ。直子について當(dāng)時僕はそれほど多くのことを覚えていたわけではなかった。ずっと前にそれと同じシャツを彼女が著ているのを見たことがあるような気がしたが、はっきりとした記憶があるわけではない。彼女は淡いグレーのトレーナー？？シャツの袖を肘 の上までたくしあげていた。並んでペンチに座った二人の修道尼だけがきちんと黒い冬の制服を身にまとっていて、彼女たちのまわりにだけは夏の光もまだ屆いていないように思えるのだが、それでも二人は満ち足りた顔つきで日なたでの會話を楽しんでいた。日曜日の午後のあたた かい日差しの下では、誰もがみんな幸せそうに見えた。日射しはもう初夏のものだった。朝方ばらばらと降ったりやんだりしていた雨も晝挪威的森林 2020425 20 前には完全にあがり、低くたれこめていたうっとうしい雨雲(yún)は南からの風(fēng)に追い払われるように姿を消していた。 僕と直子は四ッ谷駅で電車を降りて、線路わきの土手を市ヶ谷の方に向けて歩いていた。笑い話のつもりではなかったのだけれど、結(jié)局は僕も笑った。 「ワ、ワタナベ君もさ、一緒に起きて體操するといいのにさ」と彼は言って、それから朝食を食べに行ってしまった。突撃隊は自分のもち物を極端に大事にする男だったからだ。ひとつ抜かすとさ、み、み、みんな出來なくなっちゃう」 僕はそれ以上何も言えなかった?！袱窑趣膜坤睊iかすってわけにはいかないんだよ。他のところは全部我慢するから。気がつ、つかなかった」 「だからさ」と僕はベッドの上に腰を下ろして言 った。 「はら、これだよ、ちゃんとあるだろう？」 「そ、そうだな。ぴょんぴょん跳ぶやつだよ 「そんなのないよ」 挪威的森林 2020425 19 僕の頭は痛みはじめた。それでいいだろ？」 「ちょ 、跳躍？」と彼はびっくりしたように訊きかえした。そのかわり跳躍のところだけはやめてくれよ。 「じゃあ歩み寄ろう」と僕は言った。ぼ、僕のはトランジスタ？ラジオじゃないからさ、で、電源がないと使えないし、音楽がないとラジオ體操ってできないんだよ」 たしかに彼のラジオはひどく古い型の電源式だったし、一方僕のはトランジスタだったが FM しか入らない音楽専用のものだった。ここなら下の部屋は物置きだから誰からも文句はこ ないし」 「じゃあ中庭でやりなよ。どうしてかは説明できないけどとにかくそうなってるんだよ 「駄目だよ。 「知ってるよ、それは。 「悪いけどさ、ラジオ體操は屋上かなんかでやってくれないかな」と僕はきっぱりと言った。共同生活においてはある程度の我慢は必要だといいきかされていたからだ 。なにしろ彼が跳躍するたびに――それも実に高く跳躍した――その震動でベッドがどすんどすんと上下したからだ。しかしそんなときでも、ラジオ體操が跳躍の部分にさしかかったところで必ず目を覚ますことになった。それからラジオをつけ てラジオ體操を始める。歯を一本一本取り外して洗っているんじゃないかという気がするくらいだ。そして服を著て洗面所に行って顔を洗う。 毎朝六時に「君が代」を目覚し時計がわりにして彼は起床した。彼が関心を抱くのは海岸線の変化とか新しい鉄道トンネルの完成とか、そういった種類の出來事に限られていた。見るからに右翼學(xué)生という格好だったし、だからこそまわりの連中も突撃隊と呼んでいたわけだが本當(dāng)のことを言えば彼は政治に対しては百パーセント無関心だった。學(xué)校に行くときはいつも學(xué)生服を著た。 彼はいつも白いシャツと黒いズボンと紺のセ ーターという格好だった。それから我々はマッチ棒のくじをひいて二段ベッドの上下を決めた。でも君はそうじゃないって言うし……」 彼の言っていることの方が正論だった?！袱?、僕の場合はち、ち、地図が好きだから、ち、ち、ち、地図の勉強(qiáng)してるわけだよね。それだけ」しか しその