【正文】 除此以外，再沒有別的聲響。天空高踞頂上，只消定睛凝視一會，你便會感到兩眼發(fā)痛。ll have an ice trip. AufWiedersehen?。ㄗＤ猛居淇?。（ lt\39。那是在一九六九年秋天，我就要滿二十歲的時候。抬起頭，我仰望飄浮在北海上空的烏云，一邊思索著過去的大半輩子里，自己曾經(jīng)失落了的。為了不叫頭腦為之迸裂，我弓著身子，兩手掩面，就這么一動不動。這時，飛機順利著地，禁菸燈號也跟著熄滅，天花板上的擴音器中輕輕地流出 BGM 音樂來。這架碩大無比的飛機正穿過厚厚的烏云層往下俯沖，準備降落在漢堡機場。僕としてもできることならかわってあげたかったと思う。直子は僕に対してなんとなく腹を立てているように見えたが、その理由は僕にはよくわからなかった。 キズキの葬式の二週間ばかりあとで、僕と直子は一度だけ顔をあわせた。そしてキズキが戻ってくるのを待った。 僕とキズキと直子はそんな風に何度も一緒に時を過したものだが、それでもキズキが一度席を外して二人きりになってしまうと、僕と直子はうまく話をすることができなかっ挪威的森林 2020425 27 た。彼の父親は歯科醫(yī)で、腕の良さと料 金の高さで知られていた。あれほど頭が切れて座談の才のある男がどうしてその能力をもっと広い世界に向けず我我三人だけの小世界に集中させることで満足していたのか僕には理解できなかった。またそれに加えて、たいして面白くもない相手の語から面白い部分をいくつもみつけていくことができるというちょっと得がたい才能を持っていた。三人でいると彼は直子に対しても僕に対しても同じように公平に話しかけ、冗談を言い、誰かがつまらない思いをしないようにと気を配っていた。四人めが入ると雰囲気がいくぶんぎくしゃくし た。たぶん彼女たちにも僕のことは理解できなかったんじゃないかと思う。直子がクラス？メートの女の子をつれてきて、四人で動物園に行ったり、プールに泳ぎに行ったり、映畫を観に行りたりした。キズキと彼女とは殆んど生まれ落ちた時からの幼ななじみで、家も二百メートルとは離れていなかつた。 はじめて直子に會ったのは高校二年生の春だった。「でも何がどう変ったのかはよくわからないな。「どうせ日曜日ならいつも暇でごろごろしているし、歩くのは健康にいいしね」 挪威的森林 2020425 25 我々は山手線に乗り、直子は新宿で中央線に乗りかえた。 「そういうのってわかる？」 「多かれ少なかれそういう感じって誰にでもあるものだよ」と僕は言った。それでそれを訂正しょうとすると、もっと余計に混亂して見當ちがいになっちゃうし、そうすると最初に自分が何を言おうとしていたのかがわからなくなっちゃうの。僕にもどう言えばいいのかわからないけどさ」 「うまくしゃべ ることができないの」と直子は言った。でももちろんそんなものは見つからなかった。電燈がうぶ 毛をきれいな黃金色に染めた。「筋合じゃないってどういうこと？」 彼女は赤くなった。 「申しわけないけれど僕の方はかなりくたくただよ」 「ごめんなさいね、一日つきあわせちゃって」 「でも君と話ができてよかったよ。ほら、家の裏がもう山でしょ？だから自然に足腰が丈夫になっちゃ ったの」 「そうは見えないけどね」と僕は言った。そして我々は四ツ谷から駒込まで歩きました、と僕は思った。喉が乾いたので僕は一人でビールを飲んだ。 「ここはどこ？」と直子がふと気づいたように訊ねた。そして都電の線路に沿って駒込まで歩い た。直子は自分の言いたいことだけを言ってしまうと、また前を向いて歩きつづけた。時々直子はうしろを振り向いて僕に話しかけた。直子と僕のあいだには常に一メートルほどの距離があいていた。直子がどうして電車を降りようと言いだしたのか、僕には全然理解できなかった。べつにどちらもたいした用事があるわけではなかった。僕はそれについて直子に何か言おうとしたが、どう表現(xiàn)すればいいのかわからなかったので結(jié)局は何も言わなかった。特徴的だったふっくらとした頬の肉もあらかた落ち、首筋もすっかり細くなっていたが、やせたといっても骨ばっているとか不健康とかいった印象はまるでなかった。「よくわからないわ、いいのよ」 それが會話の終りだった。「ただ私、ちょっと考えてたのよ?？激à皮撙欷兄弊婴文郡颏袱盲纫姢毪瑜Δ蕶C會もなかったのだ。そういうことだよ」 「そうね」と言って彼女は肯き、しばらく何かに思いをめぐらせているようだった。煩わしいことは結(jié)構(gòu)あるといえば挪威的森林 2020425 21 ある。少くとも耐えがたいと いうようなことはないな」 彼女は水飲み場の前で立ち止まって、ほんのひとくちだけ水を飲み、ズボンのポケットから白いハンカチを出して口を拭いた。 「共同生活ってどう？ 他の人たちと一緒に暮すのって楽しい？」と直子は訊ねた。よく洗いこまれたものらしく、ずいぶん感じよく色が褪せていた。土手の向うに見えるテニス？コートでは若い男がシャツを脫いでショート？ハンツ一枚になってラケットを振っていた。鮮かな緑色をした桜の葉が風に揺れ、太陽の光をきらきらと反射させていた。彼女の笑顔を見るのは――それはほんの一瞬のうち に消えてしまったのだけれど――本當に久しぶりだった。僕が言葉を失って空しくベッドに腰かけていると彼はにこにこしながら僕を慰めてくれた。十年も毎日毎日やってるからさ、やり始めると、む、無意識に全部やっちゃうんだ?！袱饯长尾糠证坤堡蚨苏郅盲皮郅筏い螭坤?。もうどうでもいいやという気もしたが、まあ言いだしたことははっきりさせておこうと思って、僕は実際に NHK ラジオ體操第一のメロディーを唄いながら床の上でぴょんぴょん跳んだ。あれすごくうるさいから。やれやれ、と僕は思った。屋上でやると三階の人から文句がくるんだ。 「それやられると目が覚めちゃうんだ」 「でももう六時半だよ」と彼は信じられないという顔をして言った。三日間、僕は我慢した。 挪威的森林 2020425 18 僕はだいたい夜遅くまで本を読み朝は八時くらいまで熟睡するから、彼が起きだしてごそごそしても、ラジオをつけて體操を始めても、まだぐっすりと眠りこんでいることもある。顔を洗うのにすごく長い時間がかかる。そういうことについて話しだすと、彼はどもったりつっかえたりしながら一時間 でも二時間でも、こちらが逃げだすか眠ってしまうかするまでしゃべりつづけていた。靴も鞄もまっ黒だった。彼が上段で僕が下段だった。そのためにわざわざと、東京の大學(xué)に入って、し、仕送りをしてもらってるわけだよ。ただたまたま演劇だったんだ、気が向いたのが。混亂するとどもりがひどくなった。講義要項にそう書いてあっただけだ。 「演劇って芝居やるの？」 「いや、そういうんじゃなくてね。しかし「地図」という言葉を口にするたびにどもってしまう人間が國土地理院に入りたがっているというのは何かしら奇妙であった。 「地図が好きなの？」と僕は訊いてみた。僕が忙しくて三日風呂に入らないとくんくん匂いをかいでから入った方がいいと忠告してくれたし、そろそ挪威的森林 2020425 16 ろ床屋に行けばとか鼻毛切った方がいいねとかも言ってくれた。あまりにもあっさりとみんなが信じるのでそのうちに僕も本當にそうなのかもしれないと思うようになった。僕もとくにヌード寫真を貼りたかったわけでもなかったのでべつに文句は言わなかった。それからみんなは彼のことをナチだとか突撃隊だとか呼ぶようになった。僕は他の連中に「あいつカーテ ンまで洗うんだぜ」と言ったが誰もそんなことは信じなかった。そんなカオスの中からよく致命的な伝染病が発生しなかったものだと今でも僕は不思議に思っている。そしてどの部屋にもひどい匂いが漂っている。ごみ箱の底にはかびのはえたみかんの皮がへばりついているし、灰皿がわりの空缶には吸殻が十センチもつもっていて、それがくすぶるとコーヒーかビールかそんなものをかけて消すものだか ら、むっとするすえた匂いを放っている。しっくいの壁には「平 凡パンチ」のビンナップか、どこかからはがしてきたポルノ映畫のポスターが貼ってある。家具はどれも極端なくらい簡潔でがっしりとしたものだった。それに僕にしたところで何かの折りにふとそう思っただけで、それを深く追求してみようなんていう気はさらさらなかったのだ。線路工夫やタクシーの運転手やバーのホステスや夜勤の消防士やビルの夜警や、そんな夜に働く人々が國家の庇護を受けることが できないというのは、どうも不公平であるような気がした。旗はするすると降り、桐の箱の中に収まる。そして二人は背筋をしゃんとのばして（気をつけ）の姿勢をとり、國旗をまっすぐに見あげる。學(xué)生服がテープレコーダーのスイッチを押す。學(xué)生服が桐の箱をあける。學(xué)生服はもちろん、學(xué)生服に黒の皮靴、中野學(xué)校はジャンパーに白の運動靴という格好である。そして中野學(xué)校氏とは逆に背が低く、小太りで色が白い。食堂でも風呂でも一度も顔をあわせたことがない。そのとなりにはこの國旗掲揚を手伝う助手の如き立場の學(xué)生が控えている。 國旗を掲揚するのは東棟（僕の入っている寮だ）の寮長の 役目だった。日常生活というレベルから見れば右翼だろうが左翼だろうが、偽善だろうが偽悪だろうが、それほどたいした違いはないのだ。たしかに寮には寮生の中のトップ？エリートをあつめた特権的なクラブのようなものがあって、僕もくわしいことはよく知らないけれど、月に何度かその設(shè)立者をまじえて研究會のようなものを開いており、そのクラブに入っている限り就職の心配はないということであった。正確なところは誰にもわからない。 この寮の唯一の問題點はその根本的なうさん臭さにあった。これも三階建てだ。窓のカーテンはどの部屋も同じクリーム色、日焼けがいちばん目立たない色だ。中庭の両側(cè)には鉄筋 コンクリート三階建ての棟がふたつ、平行に並んでいる。門をくぐると正面には巨大なけやきの木がそびえ立っている。僕としてはできることならアパートを借りて一人で気楽に暮したかったのだが、私立大學(xué)の入學(xué)金や授業(yè)料や月々の生活費 のことを考えるとわがままは言えなかった。そこなら食事もついているし、いろんな設(shè)備も揃っているし、世間知らずの十八の少年でもなんとか生きていけるだろうということだった。何故なら直子は僕のことを愛してさえいなかったからだ。だからこそ彼女は僕に向って訴えかけねばならなかったのだ。そして直子に関する記憶が僕の中で薄らいでいけばいくほど、僕はより深く彼女を理解することができるようになったと思う。全てがあまりにもくっきりとしすぎていて、どこから手をつければいいのかがわからなかったのだ。直子との約束を守るためにはこうする以外に何の方法もないのだ。ひょっとして自分はいちばん肝心な部分の記憶を失ってしまっているんじゃないかとふと思うからだ。 「本當にいつまでも私のことを忘れないでいてくれる？」と彼女は小さな囁くような聲で訊ねた。 「こっちにおいでよ。梢を抜けてくる秋の光が彼女の上著の肩の上でちらちらと踴って いた。もしたとえそう見えなかったとしても、そうなのよ」 「また會いにくるよ」と僕は言った?！袱栅郡膜扦いい韦琛￥扦猡猡窌r間さえあれば僕は君のことをきちんと理解するし、そうな れば僕は世界中の誰よりもきちんと理解できると思う」 僕らはそこで立ちどまって靜けさの中で耳を澄ませ、僕は靴の先で蟬の死骸や松ぼっくりを転がしたり、松の枝のあいだから見える空を見あげたりしていた。私の言ったこと気にしないでね。 僕と直子はまるで探しものでもしているみたいに、地面を見ながらゆっくりとその松林の中の道を歩いた。どうしてそれがわからないの？それがわからないで、どうして私の面倒をみるなんて言うことができるの？」 僕は黙っていた。ねえ、いい？もし私が今肩の力を抜いたら、私バラバラになっちゃうのよ。 彼女の聲を聞いて、僕は自分が何か間違ったことを口にしたらしいなと思った。もし君が僕を今必要としているなら僕を使えばいいんだ。終ったところで僕らはもう一度考えなおせばいい。俺の人生っていったい何だったんだ？この女のおもりをするだけのことなのかって。ねえ、もしよ、もし私があなたと結(jié)婚したとするわよ ね。いろんな思いが彼女の頭の中でぐるぐるとまわっていることがわかってい